2018年4月12日木曜日

俳優を目指す若者たちへ



今回もリラックスの話になるが、3.4
歳の子供を見ると感動する。

泣いたり、笑ったり、怒ったり、瞬時に現れる。

(映画等で、子役が素晴らし演技をしている。)

年齢を重ねるにつれ、周りから、ああしてはいけない、こうしてはいけない、社会に適応するためにと、自分が感じた事を抑えるよう教育される。

何かを感じると、
自動的にブレーキがかかり表せなくなる。

問題は、
表したくても表せなくなる。

そして、
あなたらしさを失っていく。

俳優訓練とは、
感じた事、表したい事を表せるようにする訓練だ。

(ブレーキをかける訓練は必要ない。永年社会で訓練されているのでかけたい時はいつでもかけられる。)

ある俳優が、それほど才能に恵まれていないのに、なかなか良い演技をしているな、と思う時はリラックスがいいことが多い。

よって、まず、俳優がマスターすべきは、リラックスの問題だと言われる。

「一階を先ずしっかりと建てないと二階三階と積み上げられない」
とストラスバーグが口癖のように言っていた。

リラックスで、もう一つ大切なことがある。

メンタルの緊張を解くことだ。

心理的な緊張をフリーにすることだ。

首から上をリラックスさせること。

先ず、目。

生活のほとんどを目に頼っているので緊張しやすい。

そしてこめかみ。
ブルーナーブと言って色々な神経が交差している場所で本を読んだりしてつかれると、無意識に指で揉んだりする。

次に、顎と口。
考えた事をオートマチックに言葉にする。
又、考えた事を即座にブレーキをかける。
緊張しやすい場所。

そして首。
重い頭を一日中支えて、脳に通ずるあらゆる神経系統等通っていて、非常に緊張しやすい。

まず、みんなが、やってみることは、自分の身体の何処に緊張があるかを見つけ、その箇所を緩まるように動かし、声を出して緊張を外に開放し、緩んだかどうかを必ずチェックすることだ。

具体的な訓練を言葉にすることは難しいが、とにかく工夫しながらやって見てください。

ZEN

ザ・アクターズスタジオと恩師リー・ストラスバーグの思い出



~第13話~

僕は、俳優になりたいと思わなかったので、スタジオ以外で演技をしたことがない。

しかし、一度だけ例外がある。

NYに、引退した俳優達のクラブハウスがあって、そこの劇場で演じたことがある。

老俳優を喜ばすために是非、協力してくれと言われて、20人ほどメンバーが駆り出された。

現在、そのプレイの記憶が殆ど無いが、フランスのプレイで、法廷シーン。

ひとりひとり名前を呼ばれて立ち上がるのだが、フランス語の名前でややっこしくて、うっかり、すっかり自分の役の名前を忘れてしまった。

20人ほどの陪審員が名前を呼ばれて、ひとりひとり立ち上がっていく場面があり、自分の役の名前を忘れてしまって、冷や汗もの。

名前を呼ばれる度に、手に汗をにぎって用心深くまわりを見回し、椅子の肘掛を握りしめて中腰になる。

何回も、何回も同じことを繰り返し、緊張のシッパナシ舞台で、此れほど苦しい思いをしたことがない。

やっと解放されて楽屋で一休みしていると、ぼくの知り合いの女性が、
「ゼンに、是非会いたい」
と言う有名な批評家がいるから連れてきたと言った。

彼曰く、
「ゼン、舞台で本当に生きていたのは、あんた一人だけだ、感動した。」
と言って握手を求めて来た。

確かに、舞台で息が詰まるほど生きていた!

しかし、理由を説明する訳にはいかない。

ストラスバーグに教わった。

「褒められたらつべこべ言うな。相手の目を見て握手し熱い想いで、Thank Youと一言言えと。」

ぼくは、握手し熱い想いで
「Thank You」
と言った。

次の日、同じ舞台で別のプレイを演じることになった。

どんなプレイだったか全く覚えていないが、ぼくの役は舞台の中央に置かれた丸テーブルに小さなガラスの花瓶に入った花を、舞台の中央に置かれた丸テーブルの上に置くと言う場面だ。

長年ダンスをやっていたので、格好をつけて何回か回転しながら花瓶をテーブルにポンと置いた瞬間、力を入れ過ぎて花瓶が割れてしまった。

その花瓶がないとドラマが進行しないので、下手の舞台裏に飛び込んで、
「花瓶、花瓶があるか、花瓶が欲しいんだ!  探してくれ!」
と声を抑えて叫んだ。

誰かが言った。

「上手にあるはずだ。」

観客の視線を一斉に浴びて、舞台を突っ走って横切った。

花瓶を手渡され、舞台を踊りながらテーブルに近づき格好をつけて花瓶をテーブルの中央に用心深く軽やかにポンと置き、ポーズをとった。

思いがけなく観客席から一斉にすごい拍手。

(ストラスバーグは言っていた。舞台でこのような偶発的なことが起こると、劇場の雰囲気がいっぺんに変わり、次に何が起こるだろうと、期待と好奇心で異様な雰囲気が高まると。)

ホット一息ついていると、また、例の批評家が現れて、
「ゼン、舞台で本当に生きていたのは、あんた一人だけだ。感動した。」
と。

僕は、又、熱いまなざしを向けて握手し
「Thank You」
と云った。

ZEN

2018年4月8日日曜日

俳優を目指す若者達へ



リラックスについては、
以前の俳優を目指す若者達へで述べているので、参考にしてほしい。
↓↓↓

人は他人の視線を感じると緊張しやすい。

例えば、お風呂に入ってリラックスしているところに、誰かが入ってくれば緊張する。

繰り返す事となると思うが、
リラックスとは何かを知りたければ
緊張とは何かを知ればいいと言う。

緊張とは不必要な力だ。

ただ、立っているのに、
脚を踏ん張ったり、
肩をいからせたり、
奥歯を噛み締めたりする必要はない。

緊張には二種類ある。

小さい時から習慣的に強いられて持ち続けている緊張と
困難な事態に直面して一時的に起こる緊張だ。

100メートルを10秒切る選手や
ボクシングで互いに殴り合っている選手を見て
「今日は、リラックスが、いいですね!」
と言われる。

リラックスは、
何かと知りたかったら
緊張とは何かを知ればいい。

緊張とは、
余分な力で不必要な力だ。

不必要なものは、
不必要だ。

特に俳優は、
人の前に立つ。

非常に緊張しやすい状況に置かれる。

解決策は?

自分の脳で命令して
緊張をとる能力を
身につける事だ。

観客の前で
準備体操をやったり、
ヨガをやったり、
一杯飲んだりするわけにいかない。

(一杯飲むと必ずいい演技をする。しかし、二週目には、二杯飲む事になり、アル中の道を歩む事になる事になる。)

俳優訓練の第一歩、
最重要課題は、
リラックスの訓練だ。

からだのどこが緊張しているか、
敏感になり、
脳で命令して瞬時に取り除く能力を身につける事だ。

リラックスが良いと、
集中力が高まるのみでなく、
表現力も高まる。

トップクラス俳優は
間違いなくリラックスがいい。

リラックスのアプローチを文章で説明することは難しい。

一人一人の緊張の場所も、度合いも、違うし、
一人一人の性格、
理解力に合わせて
ガイドしていく必要があるからだ。

ZEN