僕は何故3日でメンバーになったのだろう。
 当時 、たまたま偶然に、僕の意思に反して、他人に引っ張りこまれ、アクターズスタジオに見学者として、連れ込まれた。
 この演劇の世界には、全く無知であった。
 その後、生まれて初めて一女性から強引に、
「ゼン!五分でいいから、雪国を演出してくれ」
と強引に頼まれ、演出のえの字も知らなかったのに、演出させられた。
「ゼン!五分でいいから、雪国を演出してくれ」
と強引に頼まれ、演出のえの字も知らなかったのに、演出させられた。
 すると、アイディアが止まらず1時間以上になり、公演では、スタンディング オーべーションにあった。
 また、チャック ・ゴードンが、やってきて、二人で組んで、「ダム、ウエーター」のギャングの役をやり、演技を絶賛されてたりした。
 しかし、メンバーになりたいと思いもしなかった。
 あの時は、何が何だか断る理由も見つからず、アクターズスタジオの最終試験を受ける事を同意した形になった。
 合格して、翌日のクラスで、ストラスバーグが、メンバーのみんなに紹介した時、
「ゼンはメンバーになった意義を自覚していないだろう」
と言われた。
「ゼンはメンバーになった意義を自覚していないだろう」
と言われた。
 ありがたい、とも思わず、全く何のことか自覚がなかった。
 では、他の俳優達が、何年もかけてやっとメンバーになるのに、なぜ、3日で受かったのだろう!
 ここに、声を大にして伝えたいことがある。
 ストラスバーグの俳優の基本訓練法の最重要課題をマスターしていたからだ。
 スタニスラフスキーからストラスバーグに受け継がれた俳優訓練・五感の記憶を完璧にマスターしていたからだ。
 五感の記憶の課題の一つ、プライベート モーメント。
 舞台に上がって、他人の目をいかにシャットアウトできるかだ。
 このエクササイズは、ストラスバーグの貴重な、偉大なる発見だと思う。
 彼は、ひとの目を一切気にしない場所はどこかと考えた。
 自分の部屋であると。
 頭で考えるのではなく五感の記憶で自分の部屋を信じられるまで、徹底して訓練してみようと決心した。
 街を歩いている時も何時も自分の部屋と一緒に歩いた経験を思い出す。
 この公開の孤独と呼ばれる アプローチは、自分の人に見せたくない事をメンバーの前で、やって見れば、成功したかどうか、すぐわかる。
 僕はこの訓練の成否を確かめてみたかったために、素っ裸になってみた。
 自分の部屋だと確信した。
 99パーセント。
 100パーセントだったら病院行きだ。
 なんの抵抗もなかった。
 アクターズ スタジオ歴史上、人の目を一切気にしないで、素っ裸にになれたのは、僕が初めてだと言われた。
 嬉しかったと思う一方、終って恥ずかしいと思った。
 ストラスバーグに対する恩返しだ。
 (アクターズ・スタジオでは、このような基本的訓練は、一切やらない。彼の個人のクラスのみ)
 最終試験の舞台に上がったときに、自分の部屋の黄色い床が見えた。
 生まれて初めての最終試験なのに、何の抵抗もなかった。
 大勢の審査員が見えているのに、何の抵抗も無く怒り、悲しみ、挫折感を、そして、自分の全てをさらけ出すことが出来た。
 スタニスラフスキー、ストラスバーグの発見した偉大なるもう一つ最重要なエクササイズは、感情の記憶である。
 自分の過去人生で一度か二度体験した悲劇的な感情を(通常40分かかると言われるものを、訓練によって1分までに縮る)思い出す訓練だ。
 僕は時間をかけて これもマスターしていた。
 具体的な感情の記憶の訓練方法は、この一年間の河口湖合宿クラスで、全員に修得させたいと思っている。
 メソードアクティングは、感情の記憶とも言われる。
 ストラスバーグは言った。
「我々の訓練はオールド ハット、つまり、使い古された帽子だと言われる事もある。しかし、我々は演劇の本流泳いでいるのだ。」
 ストラスバーグの40年間、アクターズスタジオのクラスに一度も遅刻しなかった。
 彼の演劇に対する情熱に、当時を思い出して、熱いものが込み上げてくる。
 全15種類ある五感の記憶のエクササイズを、生徒とともにビデオに収録して、後世に伝えたいと思っている。
 NY ザ アクターズ・スタジオ
正会員
ZEN HIRANO
正会員
ZEN HIRANO

