短期合宿クラスの指導方針について
ゼン・ヒラノ
俳優は、自分の良く知った生活を演じる事ができなくては、ましてや他人の、自分がよく知らない生活を演じるには無理がある。
(例えばシェークスピア)
例えば、実人生では相手が好きで、恋に落ちる。
しかし、俳優は現場で、そして又は、舞台で指定された相手役と決められた時間に、実人生で体験した感情を持てるかどうか?
舞台では毎晩、映画では続けて何回も、それが出来なければ、俳優の役目を果たせないし、仕事にありつけません。
例えば、恋に落ちた場面を演じるとします。
方法は2つあります。
恋に落ちたことを手振り身振り表情を使って演じて見せるか、本当に恋に落ちた体験を表現するか。
つまり、恋に落ちた振りをするか、恋に落ちた体験をするかです。
もう1つ問題があります。
恋心を感じたとしてそれが外に表れるかどうか、
観客に伝わるかどうかということです。
又、10回のうち9回出来なければプロと言えないと言われます。
そして、全ての深い感情は眼に表れます。
身体の隅々までリラックスしていれば、感情は眼に表れます。
眼は魂の窓と言われますから。
抜群の想像力を持っていて、この人はあなたの恋人ですよと言われて、顔が赤らみ胸がときめく人は少ない。
指定された時間と場所で、 この課題を解決しようとの試みがメソードアクティングのセンソリー訓練の1つ、パーソナリゼーションです。
パーソナリゼーションとは、自分の恋人の姿、かたちを 目の前の相手役に移し替えていく
作業です。
ザ、アクターズスタジオでのぼくの体験談をいうと、7、8人であるプレイを演じた時に、僕にとって稀なことですが、僕の相手役がどうしても好きになれませんでした。
相手もそれを察してか、ギクシャクとした関係になりました。
スタジオのクラス中に、かなり離れた席にいた彼を、僕が尊敬していた知人の鳴海四郎さん(立教大の教授で英文学者)に置き換えて、何回も何回も盗み見し、このパーソナリゼーションの移し替えによって、彼を鳴海四郎さんだと信じられ、役に要求される感情を持てるようになりました。
その後顔を合わせるたび、微笑みが自然に浮かんで来て、戯曲の要求する自然で素晴らしい関係を持つ事ができました。
その作品を発表する頃には、パーソナリゼーションのエクササイズなど、全く忘れて舞台のみではなく普段でも、とても親しい関係になっていました。
あなたも想像の世界で、毎晩、恋に落ち胸をときめかしたかったら、パーソナリゼイーションのエクササイズを使う事です。
舞台での一場面は、15分間以内と言われます。
15分間胸をときめかせる訓練をしてして見て下さい。
想像の世界で、15分間恋におちるのです。
ZEN