スタジオ メンバー
ゼン ・ヒラノ
アクターズ・スタジオでは、優秀な俳優を育てるためにどのような訓練方法をしてきたかを簡単に説明したいと思う。
生前、ストラスバーグは、年間、第一次試験、第二次試験をパスし、第三次最終試験に残った俳優から、一人、ないし二人を選んでメンバーの資格を与えた。
メンバーになれば、週に二度のクラスに毎回、出席出来るし、又、10年に一度出席も可能。
しかも、生涯一切無料。
演技クラスは、11時から約2時間。
2組の俳優たちが戯曲の一場面を演じて見せることになる。
メンバーは、プロの俳優たちなので、基本的に、本人ができる事を見せるのではなく、突き当たり、行き詰まっている問題、自分では解決困難な問題を持ち込んで、ストラスバーグの前で演じて見せることになる。
俳優は優秀であればあるほど、微妙な、その個人特有の演技の悩みを抱えている。
俳優として、自分自身を誤魔化すわけにはいかない。
本人の真実に対する感覚が許さない。
そして殆どの演出家は、この俳優の問題を解決出来ない。
俳優として、自分自身を誤魔化すわけにはいかない。
本人の真実に対する感覚が許さない。
そして殆どの演出家は、この俳優の問題を解決出来ない。
ストラスバーグは言っていた。
「この目の前に立っている俳優の問題を、今日、解決出来るかもしれないし、又、5年掛かるかもしれない。しかし、必ず、解決してみせる!」
と。
「この目の前に立っている俳優の問題を、今日、解決出来るかもしれないし、又、5年掛かるかもしれない。しかし、必ず、解決してみせる!」
と。
俳優たちは、相手役と組んで、15分か、20分ほどの戯曲の一場面を演じて見せ、自分の演技の問題点を提示することになる。
まずメンバー達の感想を聞いた後、ストラスバーグ自身が問題の解決に乗り出す。
(僕自身、2,30回ほど彼の前で演じて見せ、演技力を高いレベルで達成させる事が出来るようになった。)
アクターズスタジオは俳優にとって、世界一神聖な場所だと言われていた。
プロデューサーやその他のビジネス関係者は、一切立ち入り禁止。
エリア・カザン(『欲望という名の電車』等、アメリカでNO,1の演出家と言われる。)も、ストラスバーグに代わって、時折演技指導をしたが、時間が来ると入口のカギを掛けてしまうという徹底ぶり。
多分 、オリンピック選手を育てるのと似ているがもしれない。
ズバ抜けて才能ある選手を見つけて、徹底して訓練し、金メダルを狙う。
我々俳優は、想像の世界で活躍し、運動選手とは違うのだが、スタジオのメンバーで、アカデミー賞受賞者は100人以上と言われる。
(前世紀半ばから今日に至るまで、マーロン・ブランドの演技力を上回る俳優は一人もいない。彼もスタジオメンバーで、アカデミー賞受賞を拒否している。)
今、当時のことを振り返って、「俳優の聖地」アクターズスタジオのメンバーになれたこと、そして、十数年に渡って、恩師ストラスバーグから、直接教えを受けられた事を心から感謝している。
ZEN