今、冬季オリンピックが盛んに行われている。
それぞれの競技で金メダルを目指して体と精神を鍛える。
力強さ、敏捷さ、バランス感覚等の熾烈な訓練を通して肉体と意思の力を養う。
一方、俳優は、感情が非常に伝わりやすい訓練を必要とする。
子供を見るとわかる。
泣いたり笑ったり、感じた喜怒哀楽を瞬時に表す。
子供の表現の自由さは、名優でも敵わないという。
(俳優訓練は、子供になる訓練だともいわれる。)
子供は成長するに従って、社会の要求に従って、感情にブレーキをかける訓練を教え込まれる。
俳優は感情を表す世界だ。
マイケル・ チェーホフは、「アクティングは感情の王国だ」と言っている。
我々は余りにも社会で感情にブレーキをかける訓練を受けたので、何かを表したいと感じても、オートマティックにブレーキがかかってしまう。
この自動的にかかってしまうブレーキを外すのが、俳優訓練の最重要課題だと言われる。
(感じたことを何でも、勝手気ままに表すようになったら、社会生活はやっていけないと、思うかもしれないが、心配無用、ブレーキを必要とするときは、いつでもかけられる。ブレーキをかけるのを永年社会生活で訓練して来たからだ。)
では、人間はどこでブレーキをかけるかといえば、体のある部分を緊張させることによってブレーキをかける。
歯を食いしっばったり、
肩を怒らせたり、
特に腰に強い感情が押さえ込まれていると言われる。
肩を怒らせたり、
特に腰に強い感情が押さえ込まれていると言われる。
僕は長い経験のおかげで、その人の前に立つと、その人の体の何処に緊張があるかが、伝わってくる。
その緊張を俳優自身が感じ取って、脳で緩めと命令して(人前で体操するワケにはいかない)緩まる能力獲得するのが、俳優訓練の先ず、第一に手をつける課題だと思っている。
リラックスの訓練は集中力を必要とするので、両方を同時に高めることができる。
俳優のみならず、どの分野にも、どの職業にも必要不可欠な課題だ。
100メートルを10秒を切る選手、ボクシングで殴り合ってる選手を見て、解説者が「今日はリラックスが良いですね。」と言ったりする。
では、リラックスとは何か?
それは緊張していないということであり、緊張とは何か? 不必要な力だ。
不必要なものは、不必要だ。
どんな職業でも、一流の人達は、間違いなくリラックスが良い。
なぜなら、今、やっている事に対して集中力が異常なレベルまで高まるからだ。
リラックスと集中力は深く関わり合っていて、リラックスが良くなると、集中力が増し、集中力が深まると深いリラックスがうまれる。
ましてや、俳優は人前に立つ。
人は、他人の視線を感じると緊張する。
その時に、自分の体に「リラックスしろ!」と命令して筋肉を緩める必要がある。
緊張すれば、あなたが表現したいと望む思考も、感情も、体の動きもぎこちなくなる。
一人で自分の部屋にいるときはリラックスしている。
人前に立って自分の部屋にいると信じられれば、素っ裸になっても大丈夫。
(ストラスバーグのプライベート・モーメントのエクササイズは、それを可能にした。僕は、スタジオで実際にテストした。)
以前にもリラックスについて話したが、リラックスについて、今回もくどくどと言っているのは、俳優訓練の基本中の基本だから。
俳優のみならず、リラックスは、どんな職業にも、運動選手にも、たとえ、悟りを開くにも必要不可欠。
我々は、舞台で、リラックスを慣れでなく、(だいたい5,6年かかる) リラックスそのものを直接訓練する事によって、数ヶ月という短期間の訓練で修得することができる。
ZEN