2018年8月26日日曜日

第21回 ザ・メソード演技訓練の実際



訓練
センソリーウォーク
五感の記憶
番外編   
表現について

ストラスバーグは言っている。

「1948年、わたしがアクターズ・スタジオの芸術監督に就任した時、感動は体験できても表現することはできないものだといううことを、益々悟るようになった。」
と。

(本当に演技に取り組みたいと、志している人は、スタニスラフスキー、ストラスバーグ、の本を読んで欲しいと願っている。)

一般に多くの人は、自分の感じていることが表れない、伝わらない。

一例を挙げると昔、ニューヨークの空港で、姉と別れを告げた時、彼女が、無感動で、心ここに在らずという様な印象を受けた。

後で知ったのだが、あの時、姉は胸が張り裂けそうになるほど、悲しかったと言っていた。

多くの俳優たち、又は、一般の人達は自分の感じていることが伝わらないので、お芝居をする。

表情をこさえたり、不必要な大袈裟なジェスチャーを入れる。
そして伝わらない。

この問題の解決方法は、リラックスの訓練だ。

自分の身体からあらゆる緊張を追い出し、感じた事が何処にも邪魔されないで、胸からの声に載せるとともに、感情が眼に表れるように訓練し習慣づけることだ。

子供を見ればわかる。
感じた事が瞬時に表れる。

俳優訓練は、子供になる訓練だと言われるゆえんだ。

人々は、心配するかも知れない。 

リラックスの訓練によって否定的な感情、怒り、憎しみ、嫉妬心等を感じて、それが出てしまったら大変だと。

心配は一切無用。

感情にブレーキをかける事は、永年に渡り、人生で訓練されているからだ。

問題は、自分の感じた心情に習慣的にブレーキをかけないことだ。

多くの学者や、科学者が天からのインスピレーションを受け、偉大なる発見をする時、真理に到達する時、おうおうにして、散歩している時、お風呂に入っている時などだという。

つまり、リラックスしている時だ。

古今東西、リラックスを求め、又、真の自分を求め瞑想や、ヨガ、座禅、荒修行等が、行われてきた。

我々は、何かの修業を通してではなく、リラックスそのものを訓練しようと言うのだ。

先ず、自分の体のどの部分に、緊張があるかを見つけ、緩まる様に色々な方向に動かし、
緩んだかどうかをチェックする。

真理的な緊張といわれる首から上の、眼、こめかみ、顎、首も同様に緩めていく。

多くの場合、ある身体の一部(腰、顎、眉)等を意識的に緩めただけで、泣き出したり、笑い出したりする場合が多い。

永年にわたり無意識に感情を抑えて来たことによる。


今回の合宿生の一人に、会社を自分の部下に任せ、新しい世界を求めて、飛び込んで来た
30代の男性がいる。

口を一文字に閉じ眉を固めて厳しい表情をしていた。

全力投球でこの社会を生きて来ただけに強い意志の力を持ている。

「眉を上げてみよう。くちびるを緩めてみよう。」
等の僕の指示に従って瞬時に実行に移す。

しかし、我々アートの世界は情感の世界だ。

その素晴らしい意志の力をバックグランドに置いて、湧き出て来た感情、衝動に從うことを要求される。

たとえ、彼が今後どの様な方向に向かって進もうと、情緒の豊かさと、意志の強さを持ち合わせれば、彼の人生は、より輝きを放つと信じている。


ZEN