センソリーウォーク
五感の記憶の必要性について
「演技とは信じることだ」と言われる。
相手役を恋人だと信じ、胸がときめけば不思議なことにアートになる。
目の前は海だと想像し、裸になってハシャギ回っても、1パーセントでもこれは想像の世界だと知っていれば、病院に行かなくても済むと言われる。
多くの俳優達は信じたフリをする。
又、ある俳優は生まれつきのせいか、非常に信じやすい!
あなたは命を狙われている。
(メンバーのクロリス リーチマンが、暴漢に追われて、物陰に息を殺して、身を潜めた映画のシーンがあった。見ていてこちの心臓がもたないと感じたことがある。)
ストラスバーグが話していたが、
「(過去の)名優グラソウが脱獄して、丸太小屋に辿り着き、その家の娘に差し出されたスープをスプーンで掬い口元に持ってって目を上げ、その娘を見た瞬間、彼が恋に落ちたのがわかった。」
と言っていた。
天から霊感が舞い降りて来た瞬間だ。
しかし、次の晩は霊感がやって来る保証は一切ない。
二流の俳優は色々ジェスチャーを工夫して、なんとかこの場面を切り抜けるだろううが、名優達は、霊感がやって来なかったらなすべもない。
何とかして、この霊感を毎晩、意識的に引き寄せる方法があるだろうか?
昔は、テレビも映画もなかった。
俳優達は、毎晩ステージに立たなければ生活できなかったし、劇団員のなかに役に適した体型、性格の人物が居なかった場合、キャラクターに変身する必要があった。
永年寝食を共にし、一つの作品を劇団員が一丸となって作り上げていったのだと思う。
(現在は、オーディションで、役にぴったりの俳優をいつ、どこからでも引っ張って来られる。)
それに、昔は、海外公演といえば船に乗り何週間波に揺られ、太陽の浮き沈みを目の当たりにし、寿命も短かった。
一回一回の公演に命をかけて舞台に上がっていったのだと思う。
(現在に名優は存在しない。マーロン・ブランドさえも名優とはいえないという。)
話はそれたが、この霊感を決められた場所と時間に毎回起こすにはどうしたら可能か?
この問題を解く鍵は、五感の記憶の訓練にあると信じている。
ここは、海辺であり、ここは10年ぶりに帰って来た故郷の我が家であり、目の前にいる相手役は、自分の恋人で胸がときめく。
これらの状況を、毎晩決められた時間に信じ、体験することが出来るようにするには何をすべきか?
答えは五感の記憶の修得にあると信じている。
僕は、この世界でキャリアを築くよりも、俳優の問題を解決することに強い関心を持った。
俳優の演技の為の基本訓練に10年間ストラスバーグの元で研究に励んだ。
このセンソリーウォーク五感の記憶の訓練が最重要事項であることを確信している。
ZEN