2018年7月28日土曜日

第14回 ザ・メソード演技訓練の実際


訓練
センソリー ウォーク 
五感の記憶
強い味、強い匂い

五感の記憶には大変個人差があって、ある人は視覚的記憶が優れていて、自分の行った場所や風景、今まで会った人の顔を事細かに思い出すことができる。

但し、俳優は頭で思い出すだけではダメ。

頭にあるものを目の前に置く必要がある。

それが想像の世界に生きると言う事だ。

又、ワインの品評会では、そのワインを口に含み、そのワインの生産地、銘柄、年代まで当ててみせる。

一流の料理人になるには、味覚に対する卓越した能力が絶対条件だ。

但し、俳優は味、匂いの記憶を指定された時間と場所で思い出す必要がある。

  
昔の話になるが、東京の目白に、「翁」と言う蕎麦屋があった。

偶然入ったのだが、出されたソバの盛り付けの美しさに感動したことがある。

彼の身体を斜めに傾けてソバの湯で具合をみる集中力の凄さを今でも思い出す。

その後、主人は東京を離れ実際に自分でソバを育てて、日本一の蕎麦職人と呼ばれるようになった。

たまたま、知人の弟が翁に弟子入りしていて、主人が
「3年前の何月、何日に造った蕎麦の味が最高だった!」
と言っていたと言う。

それ程味覚に敏感ならば、必要な時に、いつでも自分の気分を味を思い出して自在に変えることが出来るようになるだろう。

又、僕の知人の女性は、臭覚に優れた女性がいた。

どんな匂いでもその場で即、思い出せた。

薔薇の花とか自分の好きな匂いを思い出すと笑みが溢れてくる。

人前で自分をいい気分にする必要を感じたら薔薇の香りを思い出せばいい。

練習すれば演技に役立つし、一般社会人でも大いに役立つ事になる。

実際に実物を持ってきてもアートにならない。

五感の記憶を通せば、想像の世界に入っていける。

一方、彼女は、嫌な臭いを思い出せば即、不機嫌になり表情が歪む。

使い方を修得すれば、あらゆる場面に活用できる。

これらの味、匂いは五感の記憶であり、現実でないものなので非常に想像力を刺激し易い。

実際に現場で美味しいものをだされてもアートにならない。

想像力が入らないからだ。

不思議だ!

実際に恋人同士が舞台に上がってもアートにならない。

想像で胸がときめけばアートになる。



五感の記憶が、想像の世界に入り浸りこむ鍵になる。

五感の記憶には個人差があり、自分の得意な分野を見つけて想像の世界に入り込む鍵を手に入れて欲しいと願っている。



具体的に練習するには、
先ず、リラックスを5,10分程やって、強い味(梅干し)等、
指先で想像しながら舌に近づけ、この動作を何回も繰り返してみる。
何かを感じたら、いつものようにバイブレーションを入れ、胸から平均的な声を出す。
表情と声に、より表現力を強化するために。

強い匂いも、同じ手順でやってみる。

ZEN