~第9話~
スタジオの見学を始めてから半年ほど経った時に、
(どうゆうわけか、メンバーでないのに僕はスタジオを自由に出入りできた。多分ストラスバーグがOKしたのだと思う。)
一人の中年の女性が近づいてきて、
(以前、ボーグマガジンの表紙になったとのこと)
「ゼン、川端康成の『雪国』を演出して欲しい」
と声をかけて来た。
(どうゆうわけか、メンバーでないのに僕はスタジオを自由に出入りできた。多分ストラスバーグがOKしたのだと思う。)
一人の中年の女性が近づいてきて、
(以前、ボーグマガジンの表紙になったとのこと)
「ゼン、川端康成の『雪国』を演出して欲しい」
と声をかけて来た。
「演出なんて、やったこともないし、考えたこともない。とても無理。NO!」
と答えたら、
「5分でいいから。」
と食い下がって来た。
と答えたら、
「5分でいいから。」
と食い下がって来た。
ニューヨークの女性は怖い。
(しかし、今、自分の人生を振り返ってみると、常に、自分の人生の変わり目に、女性が現れて僕をレベルアップさせてくれた)
そして彼女は何回も
「ゼン! 5分でイイから」
と食い下がって来た。
「ゼン! 5分でイイから」
と食い下がって来た。
次の日、スタジオに行く約束をさせられた。
翌日、キャストの5人と、ゼンが演出するからといって7,8人のメンバーがやって来た。
僕は、一番前の席に座って顔を下に向け、頭を抱えジーと考えたが、なんの考えも浮かばない。
みんなの視線を感じながら頭をもたげ、
「掃除でもやろうか?」
と言った。
「掃除でもやろうか?」
と言った。
見学者はみんないなくなった。
翌日、今度は、想像力がほとばしって止められなくなった。
何の努力もなく、想像力が湧き上がり、次から次に場面が展開し、結局、1時間半の作品が誕生した。
僕自身も、俳優たちも何が起きているのか、次の場面がどう、展開するのか見当がつかず、一言も口をきかず黙々と僕の指示に従って付いてきた。
各場面を言葉で説明するのは難しいが、例えば主役同志が初めて結ばれるシーン。
若い女が恋に落ちているのだが、それが言えず、真夜中に酔いどれて相手の名前を大声で叫びながら彼の部屋に飛び込んでくる。
セクシュアルなシーンだ。
スタジオでこのプレーを公開した後、メンバーたちは
「こんなに興奮したセックスシーンを見たことがない。日本の美の極致だ。」
と口々に言っていた。
「こんなに興奮したセックスシーンを見たことがない。日本の美の極致だ。」
と口々に言っていた。
しかし、彼達は全く見当違い。
僕は、この二人の主役にこのセックスシーンはロデオをやる事にしたと伝えたからだ。
女は、四つん這いになって牛のようにゆっくりと円を描いて逃げて行く。
ステージの先端に来たら一回転して仰向けになり、彼女のその長く、美しい金髪を一瞬観客に見せるよう指示した。
(姉が呉服屋だったので、高価な着物をプレゼントしてくれた。)
ステージの先端に来たら一回転して仰向けになり、彼女のその長く、美しい金髪を一瞬観客に見せるよう指示した。
(姉が呉服屋だったので、高価な着物をプレゼントしてくれた。)
男は、その後しばらくしたら女を捉え、タックルする。
女は、驚いて男を思い切って突き放し一瞬叫んで仰向けに大の字になり、気を失う。
ここまでは、スローテンポで、やる!
しかし、観客にスローテンポでやってると気づかせるな。
(僕が演出すると俳優達は皆いい演技をする。僕の天から与えられた特質かもしれない。)
彼に、女が気絶したら実生活のテンポに戻れ、静かに大の字にになってる女に近づいて、右足を女の開いた両膝の間に、左足を女の膝の外の置いて静かに立ち、女ををジーと見下ろし、胸の内で10カウント数える。
そした女を凝視しながら、ゆっくりと両膝を曲げ、膝立ちし、5カウントしたら、ゆっくりと女のセックス向かって右ひざを近づけていく。
僕の当時の考えでは、恋とは身も、心も、二人が一体になる事だ。
女の左手の指に自分の指を重ね、右手の指に丁寧に指を重ね、一度大きく仰け反って静かに沈んでいくように指示した。
もちろん、衣装を着けたままだ。
その他、僕にとって、もっと、大切なシーンがあるが、言葉にするのは難しい。
もし、彼女が僕を強引に引っ張らなかったら、自分に演出能力が、あるなんて一生気がつかなかった思う。
スタジオでの演出の話は次回に続く。
ZEN