2017年10月10日火曜日

俳優を目指す若者たちへ


「リラックスについて」

リラックスについて考える時、恩師 リー・ストラスバーグのことを思い出す。

彼はリラックスが俳優訓練の最重要課題として何十年にわたって研究してきたのに、誰かが
「リラックスとは何ですか?」
と質問すると、彼の記憶からではなく、その場で改めて考えて答えを出している。 
彼は、
「リラックスは何か?を知るためには、緊張とは何か?を考えるといい」
と言っていた。

たとえば、100メートルを10秒を切って走り抜ける選手、殴り合っているボクシングの選手に対して、解説者は「今日はリラックスがいいですね」と言う。

何故か?

リラックスとは、不必要な力を入れていないということである。

人間が立っているためには、立っているための必要なエネルギーがいる。
肩をいからしたり、膝を固めたりする必要がない。
不必要なものは、不必要であると。

何故リラックスをすることが必要かというと、集中力が高まっているからであり、集中力が良くなると、よりリラックスが深くなるという相互関係にある。

リラックスに生まれつき恵まれた俳優がいる。

なかなかいい演技をするなあ、と思われる俳優も、ただリラックスが良いというだけのことが多い。

トップクラスの俳優は例外なくリラックスがいい。

だから、自分の集中していることに我を忘れ、観客の圧力からフリーになる。

そこで我々は、彼らのリラックスの能力に追いつく為に、意識的に自分を訓練が必要がある。

人間は他人の視線を感じると緊張する。
ましてや舞台では、観客はあなたを観にくる。
よって決められた時間と場所でリラックスする必要がある。

多くの人は酒を飲むとリラックスして外からの圧力や、自分自身に対する警戒心が緩み良い演技をする。
ただし、問題は一杯で効いた酒の効果が、二週めには二杯を必要とする。
又、ドラッグをやると自分の頭の中で素晴らしい想像の世界が広がっていくかも知れないが、外に表れない。
無表情となる。

よって、基本的にリラックスの訓練は、自分の身体にリラックスしろ!と命令したら、リラックスできる能力を獲得することだ。

人は脳の命令によって身体を動かすことは比較的楽に出来るが、命令によってリラックスすること(特に人前で)は難しい。

ある人は、習慣的な緊張を持っている。

自分自身を強く見せるか、守ろうとするために、無意識に肩や肘に力を入れている。
又、不安のために、いつも床を踏みつけて立っているかも知れない。
又、ある人は、小さい時の抑圧された生活環境のため天井に向けて上げた手を力を抜けと命令しても下りてこないので、自分で力を入れて下ろすことになる。

このような人は3,40人に一人の割合で見られる。

時間はかかるかも知れないが、このような人も訓練によって力を抜くことができるようになる。

立てばシャクヤク、座れば牡丹、歩く姿はユリの花

ZEN


2017年10月9日月曜日

第42回『神との対話』に魅せられて

KT(『神との対話』)に、
「あなたがたは、原始的な発声(言葉)ー実際には「騒音」ーを使ってコミュニケーションをするところまで、退化したのだ。だが、もっとハッキリした、正確で、優雅なコミュニケーションを回復している人たちも大勢いる。
特に、愛し合う者同士がそうだね。これも大きな真実を裏付けている。
思いやりはコミュニケーションを創造するという真実だ。深い愛があれば、事実上言葉は必要ない。逆もまた真実だ。多くの言葉を弄する必要があればあるほど、相手を思いやる時間が少なくなる。思いやりはコミュニケーションを生むからだ。究極的には愛だけが唯一の真実だ。だから、愛があればコミュニケーションもある。
コミュニケーションがむずかしいというのは愛が充分に存在しないしるしだよ。」
とある。

KTのどのページを読んでも、まったくその通りと言わざるをえない。

驚きと否定できない真実がある。

私ごとになるが以前、40年ほどまえに、鳴海四郎さんという英文学者がNYアクターズ・スタジオに見学に来て、たまたま、当日、僕が演技をしていたのに出くわして絶賛していたことがある。

彼は、大変優しく思い遣りのある人で、尊敬すると同時に大好きだった。

ある時、スタジオのあるプロジェクトに参加した。

僕としては、珍しく相手役が好きになれなかった。

役同士は、非常に親密で尊敬すべき間柄なのに。

相手役もそれを感じてか、ぎくしゃくした関係が続いた。

そこで、メソード演技の基本訓練【パーソナリゼイション】を実践することになる。

ここで、アクターズ・スタジオについて、説明する必要を感じます。
スタジオのメンバーになるには、一次試験、二時試験、最終試験があって合格者は年間千人以上受験者のうち、一人か二人で、本当の才能を見つけて、本人が苦しんでいる問題を解決しようとする場です。
メンバー達は、自分の出来ることでなく、出来ないことを見せる場です。問題解決の天才教師ストラスバーグの恩恵を受け、メンバーのアカデミー賞受賞者は100名以上と言われています。
メンバーになれば、すべて無料、そして、メンバーは、週2回のクラスを毎回受けてもいいし、10年に一度帰って来てもOK。プロデューサー等一切シャッタアウトで、当時、世界一神聖な場所と言われていました。
但し、メソード演技の基本訓練、五感の記憶は、スタジオでは一切教えません。それは、ストラスバーグの個人のクラス(有料)で教えていました。 メンバーの中で、1年も受けた人が殆どいない中、ぼくは、10年間通い続け、基本訓練の全てをマスターしました。

話は長くなりましたが、
これらの基本訓練の一つに、パーソナリゼーションというのがあります。

例えば、嫌いな人を好きになる方法です。

視覚、聴覚等五感の記憶を駆使して自分の好きな人に移し変えてく方法です。

スタジオで、その相手役と顔を合わせるたびに、鳴海四郎さんを具体的に彼に対してつぎ込んで行きました。

効果はテキメン、相手に対し僕が、愛と尊敬の念を持ったためにお互いに心を開いて、二人の関係が改善され大好きになりました。

(しばらく経った頃には、パーソナリゼーションのことなど、とっくに忘れていました。)

何日か後に、ストラスバーグの前でプレゼンテーションが終わり、彼のサゼッション中も、その相手役は、僕の肩を抱きかかえ、揺さぶり、満面の笑みを浮かべていたことが、今でも記憶に残っています。

勿論、あなたにパーソナリゼーションを勧めているわけではありません。

相手の眼の中をジーッとのぞきこんで、あなたの大好きな人が、あなたを見ていることに気がつくことです。

それは、相手の眼の中に自分の愛を見つけることです。

「あなたにお逢いできて、とても嬉しい」
と声をかけて見てください。

LOVE ZEN