2018年6月27日水曜日

第8回 ザ・メソード演技訓練の実際

 



訓練(精神のリラックス
口周りのリラックス

前回のこめかみ、眼のリラックスを終えたら次に口 周り、舌、顎をリラックスさせてみよう。


これらの持つ機能は、ものを食べるだけでは無く、言葉を話すと言う役割リを担っている。


考えたことをオートマチックに言葉にし、考えが先か言葉が先か解らない程に訓練されている。


又、考えた事を口にしてはマズイと思ったら、即ブレーキがかかる。


このように口周りは、思考のみならず、又、感情とも結びつき(優しくとか、激しくものを言う)人間の体の中で一番訓練されているエアリアだといわれる。


従って、緊張しやすい。


習慣的に口を一文字固く閉ざしてガードの強さを主張したり、
又、半開きにして、自分は人畜無害だと主張しているのかもしれない。


リラックスさせて、無防備であるがままの自分でいよう。


無防備な人がこの世で一番強い人だと言われる。

この思考、感情、生活と結びついた口周りをリラックスさせてみよう。





まず、舌を口の外に思い切って突き出して緊張させゆっくりと緩めてみよう。


そしてその緩んでいく感覚を味わってみよう。


その他顎、唇等を動かし緩んだかどうかを確認してみよう。


山登りと同じく他者が道を指し示すことはできても、あなたは自分の足で登らなければならない。


あなたをリラックスさせる事が出来るのはあなた以外にいない。


何事に於いても自分で考えて、研究し、答えを見つけるのだ。自分の道を開くのだ。


そうやって、初めて真実に対する感覚を育てる事が出来る。


俳優にとって、拍手を貰ったの、OKが出たのは大きなお世話だ。


一流の俳優になると、周りのみんながブラボーと拍手しても、クビを傾げてもう一度やらせてくれと言う。


真実に対する感覚が許さないからだ。



俳優訓練は、自分の中に真実に対する感覚を育てる事にある。


そして至高の領域に高く飛翔することにある。


だって芸術だから。


落ちているものを一生懸命拾い集めたりしないで、
空に向かって手の届かないものに、手を差し伸べよう。



ZEN

(次回は首周りのリラックスについて)


2018年6月24日日曜日

第7回 メソード演技訓練の実際


 
訓練(精神のリラックス)

前回の身体のリラックスを終えたら、精神を鎮めるためのリラックスに移っていこう。
 
イライラや不安等の心理的な緊張を手放すために、
首から上に注意を向けてゆっくりと緩めていく。

こめかみ、眼、口と顎、首

 
まず、こめかみ。
右のこめかみに注意を向けてみよう。
〈順番は本人の必要に応じて)
 
注意の集中無くしてリラックスは成立しない。
注意の集中とリラックスは、密接に結びついて、
注意の集中が良くなれば、リラックスが深まり、
リラックスが深まれば、より注意の集中が深まる。

注意の集中は、釘を金槌で打ち込むようでは無く、
ネジ釘のようにゆっくり回しながらだんだん深くはいり込んでいく。

注意の集中をスタートさせたら、淡々と続けていき、
何かが起きたら、それにどこまでもついて行ってみよう。
 
こめかみに注意をスタートさせたら、緩め、緩めと促す。

ある時は太陽の光にあたって、又は、温湿布を想像してこめかみが温かになり緩んでいき、広がっていくのを想像してみよう。

こめかみは色々な神経が交差していて仕事に没頭すると疲れやすく、緊張しやすい。

右のこめかみを緩め、広げ、リラックスさせたら、
左のこめかみをリラックスさせてみよう。

そして、両方のこめかみを同時に。
 
ここで注意を促したいのは、舞台で、人前でリラックスしたいからと言って、椅子を持ち出して、リラックスのエクササイズやるわけにいかない。

プロの技術を獲得したかったら、身体の部分の緊張に敏感に気付き、脳でリラックスしろと命令し、身体を動かさずにその部分を瞬時にリラックスさせ得る技術を獲得することだ。


 
次は眼、眼球に移っていこう。

人間は、日々の生活の殆どを眼に頼って生きているので眼はとても疲れやすい。

又、本を読んだり、テレビを見たり等、とくに、眼鏡をかけていたりすると疲労が溜まり緊張する。

体全体をリラックスさせると同時に注意を片方の眼に持って行く。

僕はよく金魚鉢を想像して、陽のあたった暖かな水槽の中を金魚がゆったりと泳いでいるなどと想像してリラックスに努めている。
 
そのようにして反対側の眼も同じようにリラックスさせ、
次に同時に両眼に注意を向けてみる。

 
何回も練習を続けると、緊張に気づくと反射的にリラックスさせられるようになる。
 
スタニスラフスキー曰く。
「困難なものを楽にできるように、楽にできるようになったものを習慣に、習慣を美しいものに」

ZEN
 
(次回は、口周りと顎、そして首のリラックスについて)

2018年6月22日金曜日

第6回 メソード演技訓練の実際




訓練(身体のリラックス)

五感の記憶の訓練を始めるにあたって、必要不可欠なのはリラックスすることだ。

背もたれのある椅子に座って全身の力を抜き、体重の全てを椅子に預けること。

力を抜くことに集中して、自分の身体が濡れ雑巾になった様に椅子にもたれかかる。

しばらくの間、呼吸を楽にして体の隅々に注意を向けて力を抜くことを心がける。

椅子に腰掛けての姿勢は、
[広げる]
[ずらす]
[緩める]

体を大の字に広げ、身体を左右非対称にだらしなくばらばらにズラし、口をポッカと開け眠りこけたように力を抜く。

暫くその状態を維持する。

Take your time,keep going,Explore it
と言う訓練の鉄則がある。

まず、時間を取ることだ。

優れた俳優は何かが本当に起こるまで、時間をたっぷりと掛けることが出来る。

悪い俳優は結果を求めてせかせかと先を急ぎ動き回る。

優れた俳優は結果を求めない。

何が起こるか見てみようと言う態度をとる。

そして、焦ったり騒いだりしないでたんたんと注意の集中を切らさないで続けていく。

何かが起こったら未知なるものを求めて深く進んでいく。

たっぷりと時間をかけ淡々と続け、広げて行く。

このアプローチが、全ての演技訓練の基本となる。

リラックスの訓練は先ず、身体のどの部分が緊張しているか注意を向ける。

緊張には一時的な緊張と、社会生活で長い間に溜め込んだ緊張がある。
(抑圧された感情)

自分の体の緊張する箇所を見つけたら、その箇所に注意を向けてゆっくりと身体をあらゆる方向に動かしてゆるめていく。

そして、力を抜いてその部分が緩んだかどうかチェックする。

緊張した箇所が緩んでいくと、しばしば感情的な衝動が起こることがある。

感情を感じたら即、声に乗せて外に出し解放させる。

そしてその箇所をリラックスさせることが出来たら、次の緊張する箇所を見つけていく。

出す声は、胸からバイブレーションを入れて(喉から出した声は感情が乗りにくい)
そして、平均的な声(アップエンドダウンの激しい声はセリフが言えない)を出し、
どんな強い感情がやって来てもセリフを言えるようにする。

このリラックスの訓練の目的は、
全ての緊張を体から追い出し、
感情が胸の奥深くから湧き出した感情が身体のどこにも邪魔されないで、
自然のコースを通して眼から流れ出す。

その俳優がどのレベルか、眼を見れば解る。

眼は魂の窓と言われるから。

ZEN


(今回は身体のリラックスについて述べたが、次回は心理的なリラックスについて。)


2018年6月19日火曜日

第5回 メソード演技訓練の実際



メソード演技訓練  「五感の記憶」
五感の記憶の必要性について

演技は信じることだと言われる。

舞台に立って、目の前に一面に海が広がっていて、真っ白な砂浜で灼熱の太陽に体を晒しながら波の砕ける音を聞いていると指定されてあなたは信じることができるだろうか?

殆どの俳優は信じたフリをする。

海は誰でも知っている。

簡単に頭では思い描くことができる。

その頭で、思い描いたものを目の前におくのが俳優の仕事だ。

水平線の高さは後ろから3番目の客席辺りかな?

空と海の色の違いは?

青い空、白い雲、灼熱の太陽が肌を焦がす感覚、潮の匂い、波の砕ける音、潮風が肌に吹きつけ、足が浜辺の焼けた砂に埋もれる。

海辺に立っているという実感は、
あたまの記憶では得られない。

五感の記憶を通してのみ信じることができる。

稀に見る優れた俳優は非常に信じやすいかもしれない。
このような努力なしに信じやすいかもしれない。

過去の偉大な俳優がインスペレーションに導かれ昨晩偉大な演技を観客に披露したが、今晩は何も起きなかった。

為すすべもなかった。

繰り返すことが出来なかった。

この問題を解決しようと立ち向かったのが、スタニスラフスキーであり、ストラスバーグだと思っている。

五感の記憶を繰り返し訓練し、頭で描いたものを肌で感じることが出来るようになれば、あなたは想像の世界に生きることになる。

明日も、そして、毎回繰り返して信じることが出来るようになる。

俳優としての喜び、想像の世界に生きるという喜び、高く舞い上がりたいという欲求を手に入れることになる。

俳優訓練の目的は、信じることそして、信じたものをくりかえすことが出来ること。

五感の記憶の訓練がその鍵を握ると信じている。

ZEN


五感の記憶(センソリー  ウォークについて)
五感の記憶の訓練の種類

1)カップ
2)鏡
3)太陽
4)味,匂い
5)聴覚
6)お風呂
7)シャワー
8)強い痛み
9)オーバーオール
10)好きな人、嫌いな人
11)思い出の品
12)思い出のの場所
13)酒
14)複合
15)アニマル エックササイズ
16)ぷライベート モーメント(公開の孤独)
17)燃え上がる記憶(感情の記憶)

現在、アメリカでこのエックササイズ全てをデモンストレーション出来る俳優はいない。

ミユキと僕だけである。

近々、全てのエックササイズの実際をビデオに撮りストラスバーグの生涯をかけた遺産を後世に残したいと決意している。

ZEN

2018年6月16日土曜日

第4回 ザ・メソード演技訓練の実際


リラックスについてNO、4 

「一般社会人に対して」

ストラスバーグは、常に言っていた。

我々のメソードが、一般社会人に対して貢献出来ることを強く望むと。

先ず、第一に挙げられるのはリラックスを習得することだと思う。

人は、どんな時にリラックスするのだろう。

風呂に入るとか、一杯飲むとか、散歩をするとか、ヴァケーションをとって旅行に行くとかだろう。

確かにリラックスする。

しかし、今、リラックスを要求される場面に出喰わしたらどうしたらいいだろう。

入学試験、入社試験、上司との面接、壇上に立ってのスピーチの時等々。

これらのことは、何回も繰り返すうち、慣れでリラックスするかもしれない。

歌舞伎俳優が、舞台に立って本当にリラックスするには、5年10年かかるという。

我々は、慣れでなく、リラックスそのものを訓練して短期間に獲得しようと努める。

で、改めて、リラックスとは何か?と自分に問うてみる。


その答えを見つけるには、緊張とは何かと、問うてみること。

緊張とは不必要な力だ。
不必要なものは不必要だ。


自分の身体の何処に不必要な力が入っているかを見つけて、
その箇所に注意を集中してゆっくりと動かしながら緊張を胸から声を出し、
追い出していく。

必要な場面で緊張したら自分の体のどの部分が、
緊張しているかを見つけ、
リラックスしろと脳で命令してリラックス出来るようにする。

つまり、我々は、リラックスを慣れでなく、
訓練によって習得しようと努める。

リラックスの訓練は、
自分の身体のどの箇所が緊張しているかに敏感になり、
その箇所に、緩まれ!
と脳で命令して緩まることを目的とする。

緊張には、一時的な緊張と、長いに間蓄積された緊張がある。

抑圧された感情である。

怒ってはいけない、
泣いてはいけない、
笑ってはいけないと親から、
又、周囲から教え込まれて感情を抑圧し、
常にブレーキをかけることになる。

自分の感じたことを相手に伝えたくても、
しかめっ面になったり、
無表情になったり、
本当に感じているのに芝居じみたりする。

この条件つけられた感情から自分を解放する事は、
人生において大きな意味を持つ。

明るく、
解放的で、
生き生きとして、
活動的で、
場を明るくなり人に好かれる。

今、僕のワイフみゆきが、
社会のリーダーシップを持っている人達を我々の方法を適用してガイドしているが、
短期間で大きな成果を上げ、感謝されている。

河口湖の合宿クラスでは、
一人一人が異なった問題を抱えているので、
その人の必要に応じて個々に課題を与え解決している。


俳優を目指す人のみならず、
一般社会人にに対して貢献したいと願っているので
この機会に是非、参加して欲しいと思っている。


ZEN

2018年6月15日金曜日

第3回 ザ・メソード演技訓練の実際

リラックスについてNO3

プライベート モーメント

スタニスラフスキーが
「公開の孤独」と言って心血を注いだ訓練方法の一つである。

舞台に立って、観客を前にしてその圧力からフリーにする。

観客からの視線をシャッタアウトするには、
どんな訓練、どんなアプローチがあるかを探求した。

才能ある俳優が、
観客からの抑圧のために自分の仕事にぎこちなさ、
居心地の悪さを感じて無惨にも舞台を終えることになる。

この対策として、
スタニスラフスキーが考え出した方法は、
頭上から想像のスポットライトを当て俳優がその中に留まることによって、
自分以外に誰もいないという感覚を育て
観客からの抑圧をフリーにすることを目的としたと言われる。

ストラスバーグもこの公開の孤独の課題に強い関心を持った。

そして、考えた。

人が普通、他人の目を気にしないで居られるときは何処かと?

それは自分の部屋だと。

それでは、自分の部屋をこしらえてみよう。

勿論、五感の記憶を使って自分の部屋を造ってみよう。

誰もが自分の部屋を容易に頭で考え、思い出すことができる。

五感の記憶を使うということは、頭で描いたものを、目の前に置くことだ。

目の前に自分の部屋のサイズを描いてみる。

部屋の広さ、床の広さ、天井までの高さ等目の前に置く。

窓の位置、かたち、窓を通して何が見えるか、
机など、家具調度品の全てを思い出して、目の前に置く。

じっくりと時間をかけて目の前に想像していくと、
自分以外に誰もいない、
独りきりだという感覚がやって来る。

そしたら本当に部屋が出来たかどうか試すために、
他人に見られたくないプライベートなことをやってみる。

ラブレターを読むとか、裸になるとか。

少しでも抵抗を感じたら、すぐやめて部屋を強化する仕事に戻る。

勿論このエクササイズは、クラス等人前でやる必要がある。

どんな技術でも習得するには、時間と努力が必要となる。

僕の場合、
路を歩く時も、オートバイを乗っている時もニューヨークの部屋と一緒だった。

この訓練のおかげで、アクターズスタジオのメンバーになる事が出来た。

試験当日舞台に駆け上がって想像のドアを開いたその時、
自分の部屋の黄ばんだ床が見えた。

審査員の一人一人の顔が見えるのに何の不安もない。

彼らの圧力を完全にカットした。

そして、フリーでインスピレーションの大波に浸る事ができた。

(スタジオ オーディションの詳しい模様は
http://zenhirano15.blogspot.com/2018/05/blog-post_12.html…
にて)

又、別の機会に、このプライベート モーメントは、
スタジオメンバーとストラスバーグの前で試し、何の抵抗もなく素っ裸になった。

スタジオで素っ裸になったのは、歴史上僕独りだったと言われた。

メンバー達の顔が見えるのに何の抵抗も感じない。

終わってから気恥ずかしかった。

このプライベートモーメントを自分自身で、
体験するまでは、その威力を実感できないと思う。

素晴らしいエクササイズだ。

ストラスバーグの考案した貴重な、最高のエクササイズだと信じている。



ZEN


(このプライベートモーメントのエクササイズは、それ以前に数々の五感の記憶のエクササイズを訓練する必要があると思う。)

2018年6月3日日曜日

第2回 ザ・メソード演技訓練の実際


第2回



ザ・アクターズスタジオ正会員
ゼン・ヒラノ



NO2 続編 リラックス 
~太極拳について~



ストラスバーグがニューヨーク公演の京劇の俳優達を見て、大変に驚かされたと言った。

それは、俳優達が一人残らず、驚異的な柔軟性とリラックスで舞台を動き回っていたことだ。

早速、楽屋を訪れてどんな肉体訓練をしているのかを問いただした。

「太極拳」と言う答えが返ってきた。

早速、太極拳の教師ソヒヤ ・デルザをスタジオに招いてデモンストレーションをしてもらったと言う。

この話を聞いたその日に、ソヒヤ・デルザの教室を訪れて教えを受けることになった。

当時通っていたダンスを辞めて、太極拳に夢中になった。

僕は、人一倍覚えが悪いのでその日に教わった動きを必死に頭と体に叩き込んで持ち帰り、友達の俳優達を呼んでその日に教えて覚えることにした。

今でも、記憶力が悪いのは つくづく残念だと思うが、それを長所に変えてきた。

何をやるにも、単なる記憶に頼らないで 、創意工夫し、自分の胸に聞いて自分自身の独創性を大切にしてきた。

誰でも一人一人、天から与えられたその人固有の素晴らしさを持っていると信じている。

耳でなく、胸に聞こう。

僕がアクターズスタジオで、演技に、演出に高い評価を得たのも、知識に頼らず、自分の感性に従って信じる道を歩いて来たからだと思う。

太極拳も教わった形は、人一倍正確に取得したが、その型に自分なりの美的感覚を入れて、誰よりも遥かに美しく動けるようになった。

ここで僕の教わったウー スタイルの太極拳について説明する必要があると思う。
この太極拳ウースタイルは一番から六番まであって 、ゆっくりと動くと30分くらいかかる。
格闘技を一切考慮に入れず、ゆっくりと一定のスピードで動くことを要求される。

あらゆる体型を要求されるので、形に対するセンス、柔軟性を習得することができる。

そして、この太極拳から得られる最大のメリットはリラックスだ。

上げた腕に蝿が一匹止まったらその腕が下がるほどに力を抜けと言われる。

徹底して力を抜くので、腕を上げると即、肩が痛くなる。

リラックスのため肩が痛くなれば成功だといわれる。

この太極拳ウースタイルを習得することによって、集中力、忍耐力、柔軟性、形に対するセンス 、 美的感覚、そしてリラックスを習得できる。

(このウースタイルは、日本で紹介されていない)

太極拳は 、俳優の肉体訓練に理想的だと信じているので、今回の短期合宿で、その重要性をデモンストレーションして伝えたいと思っている。

ZEN

2018年6月2日土曜日

第1回 ザ・メソード演技訓練の実際


第1回


ザ・アクターズ スタジオ正会員
ゼン・ヒラノ


NO 、1
リラックス



今回の合宿クラスのみならず、先ず、俳優達がまず、習得すべき課題はリラックスだ。

スタニスラフスキーは、言っている。
「彼が観察する機会に恵まれた名優達全部が持っていたひとつの長所は、動きの異常な自由さ、驚くべき単純さとしなやかさで、身体をコントロールしうる能力だった。
まるで観客の前で演じているのではなくて、自分の生活環境で暮らしているように思えた」
と。

演技を志ざす俳優達がまず、習得すべきことは、人前でのラックスだ。

それには、自分の体のどの部分が緊張しているかに気づくこと。

椅子に座って自分の体重を全て預け、体を大の字に広げ、だらしなくズラし、無防備に開けっぴろげにし、体のどの部分に緊張があるかを探す。

その部分に注意を集中して、緩まるようにゆっくりと動かして、緊張を消滅させる。

リラックスしたかどうかを常にチェックする。

そして次の箇所に移る。

その間、何かの衝動を感じたら、叫んだり、怒鳴ったりしないで、胸からバイブレーションを入れて、楽でコントロールされた平均的な声を外に出す。

どんなに強い感情を持ったにしてもセリフを言えるようにするために。

胸からの声は感情が伝わりやすい。

抑圧された感情も含めて、自分の体から全ての緊張を声を出して吐き出すのが目的。

これらの体を緩めるための訓練は、深い集中力が必要だ。

注意の集中力が強まればより深いリラックスが生まれ、そのリラックスがより深い集中力を引き寄せる。

普通、人前で緊張に気付いてもリラックスできない。

このリラックスの訓練は、人前で緊張に気づいたら、脳でリラックスしろと命令して体が緩むように訓練し、習慣づける。

人前で体操するわけにはいかないから。

スタニスラフスキーは言っている。
「研修生がまずマスターしなければならないのは、全く自由でそこなわれない舞台での動き ー すなわち緊張のない動き」
であると。

たとえ、どんな職業に於いても、名人と言われる人は集中力とリラックスがいい。

今回の合宿クラスでは、徹底してリラックスの正しいアプローチをガイドし、自分自身で自分を訓練し、人前で自分らしく、フリーでいられるよう生徒を導きたいと思っている。

世界のトップクラスの俳優たちは、例外なくリラックスがいい。

リラックスがよくなると、集中力が高まる。

ストラスバーグは、
「リラックスとは何かを知りたかったら、緊張とは何かを問えばいい」
と言っていた。

「緊張とは不必要な力だ。不必要なものは不必要だと。」

ZEN