2017年7月21日金曜日

第一章 俳優を目指す若者たちへ

~体験の芸術とは?~


最初から俳優を志ざす人達にとって、厳しい話になるが、ストラスバーグの生前、アクタースタジオのオーディションで、年間1000人以上の受験者で選ばれるのは、一人か二人です。
何年もかけて合格したそのメンバー達のなかで、実際に活躍しているのは、そのうちのほんの一握りの人たちです。
(アクタースタジオは、誰かをスターにするつもりは、毛頭ありません。俳優が個々に抱えている演技上の問題を、時間をかけて解決しようという場所です。)
多くの養成所や人達が、あなたをスターにするようなことを、謳い文句にしていますが、
誰も、誰かをスターにすることは、出来ません。
それは観客によって造られるものです。
ある俳優が、舞台やスクリーンに登場すると、無条件に観客を魅了してしまう人をスターと呼ばれます。
(スタニスラフスキーは、俳優に与えられる天からの最大の贈りものは、このスター性だと言っています。)

唯一、マーロン・ブランドは、スター性と才能を兼ね備えた俳優だと言われています。
現在のトップスターたちが、彼の演技力にとても追い付きません。
本人達が承知しています。

最初、マーロン・ブランドの演技を見て、どこが良いののだと思うかも知れません。
僕もそうでした。
「波止場」「欲望という名の電車」「ゴッドファーザー」等を繰り返し観て、演技に対する認識を高めてください。
彼の、「ラストタンゴ・イン・パリ」の死んだ妻に語りかける彼の独白は秀逸だと思っています。
(ストラスバーグは彼をまだ、名優だと思っていません。過去には、ドゥーザ、サルビーニ 等、偉大な俳優の存在を目撃したからです。)

俳優の真の喜びは、スターになることではなく、想像の世界に生きることです。

他人の体験した人生を、あたかも、自分に起きたように体験し、味わい尽くし、実感し、表現する事です。

それを、体験の芸術と言われます。

アメリカ等のトップクラスの俳優は、殆んど全員体験の演技をしています。
それが出来なければ仕事にありつけません。

日本では、芸能、建築、陶芸等、形に対する卓越した伝統のせいか、役の人生を体験出来る俳優が殆んど皆無です。

次週は俳優の正しい訓練方法について掲載します。

ZEN