2018年10月30日火曜日

俳優を志す人々への提言


ザ アクターズ・スタジオ正会員 
ゼン・ヒラノ

短期合宿クラスの指導方針について~


以前のコミュニティクラスは、みんなで毎月寝泊まりを共にして、朝5時に起きて訓練、昼間はアルバイトそして夜は訓練を繰り返すという生活だった。

個々の俳優達の成長過程をじっくり見守れたし、次にどんな課題を与えたら良いか見当がついた。


今回、短期合宿クラスを開いて大切なことを認識させられた。

何人かは、毎月参加することに決まっている。

次のクラスまでの課題を与え、毎日のエクササイズも各自試行錯誤して努力している。

何か質問があれば、いつも答えることにしている。

しかし、問題は、一回限り受講しようとやって来た人達だ。

僕の長年の習慣で、時間を掛けてシステマティックに成長させようとイメージしてしまう。

今回の合宿クラスは一泊二日の一回勝負で、本人に、本当に役に立つ事を持って帰ってもらう義務がある。

それには、本人が何を求めてやって来たのか、はっきり知る必要が有り、又、何を与えたらその人の成長に役だつか、より、冷静に判断する必要がある。

『神との対話』に、人は、贈りものを受け取りにやって来ると書いてあった。

教師としてその人の為になり、喜ぶ贈りものを渡す義務がある。


数週間前、歌手である一女性に、役に立つ贈りものを渡せなくて、このところ、毎日のように思い出しては心を痛めている。

アクターズ・スタジオでは、俳優の抱えている問題を解決する為のみにあって、社交辞令は一切しない。

しかしここ河口湖の合宿訓練は、初対面で一回限りのことがある。

お世辞抜きに速、問題解決にあたる僕の態度に相手は面食らったかもしれない。

今後、僕が心掛けるべき事は、先ず、相手を安心させ、相手の長所を褒めて、信頼を勝ち取り、無条件にこちらの誘導に従って貰うことだと認識した。

今回やって来たのその女性は、容姿も、歌唱力持っている。

ミュージカルオペラ座の怪人の一場面、愛する父親の墓の前で死の悲しみを歌ったのだが、其の悲しみが伝わってこない。

もし、この歌を歌って審査員をを涙させることができたら、仕事にありつける確率はグット高くなる。

(これは彼女のだけの問題だけでなく、すべての俳優、歌手等の歴史的問題である。)

それでは、このドラマチックな深い感動を、決められた場所と時間に起こさせることができるか?だ。


この問題の解決策に立ち向かったのが、スタニスラフスキーであり、ストラスバーグのメソード アクティングである。


歌手は俳優に比べ、感動を表現するのに大変有利な立場にある。

歌詞にメロディーがつき、リズムとテンポも付き、伴奏者がつく。

セリフだけを与えられ感動を要求される俳優に比べて大きなアドバンテージを与えられている。

勿論、どんな分野でも才能と、訓練が必要だが、歌手は基本訓練さえ出来ていれば、感動を入れる方法「感情の記憶の訓練」を習得すれば、人々に感動を与えるのは、難しくないと確信している。

ZEN