2018年10月21日日曜日

俳優を志す人々へ ~俳優の表現力について~


NY ザ アクターズ・スタジオ正会員 
ゼン・ヒラノ

俳優の表現力について~


芸術家と呼ばれる其々の人達は、自分の考えや、イメージ、感動を具体的な手段を通して
人々に伝えようとする人達だと思う。

ある人は、文字で、絵画で、音を通して、体の動きを駆使して等々。


しかし、俳優の表現材料は生きている人間の思考、感情、意思、イメージ等である。

つまり、普段生活の為に使っているこの肉体と精神、思考を使って芸術を表現しようと試みる。

ほかの芸術の分野では考えられないが、演劇では、俳優は嘘をつく。


好きでもない相手役に好きそうな表情を見せ、怒ってもいないのに腕を振り上げ怒声を撒き散らしたり、舞台に上がって不安で一杯なのに平静を装う。


又は、俳優が役が要求するこれこれの深い感情を持っていても、表現に繋がらない。

相手に伝わらないことが多い。


それは、理由がある。


成長し、社会の一員としてやっていく過程で、色々な制約を強いられるからだ。

その為、感じた事が、あるがままに表せなくなる。

人生のみならず、  舞台でも同じ事が起こる。


たとえ役の心情を掴みとり、観客に伝えたくても、表現出来ない為 、 大袈裟なジェスチャーをしたり、顔を しかめたり、不必要に感情を絞り出したりする。


自分の感情が、とても表れやすい俳優がいる。

歴史的に見ても女優が多いと言われる。

重要な感情は眼に現れる。


俳優の才能は、人間の喜怒哀楽の感情を深く感じられ、眼で伝えられる能力だと思っている。


腕を振り回したり、しかめっ面をしたり、大声で叫んだりする事は、どんな俳優でも出来るが、「眼の色」だけは変えられない。

アカデミー賞を貰ったような女優達 の眼を何回も何回も繰り返し観て、研究して欲しいと思っている。


感情は、リラックスが良く、身体の何処にも邪魔されなければ眼に現れる。


「感情は、魂の窓」と言われるから。


ZEN