2018年7月31日火曜日

第17回 ザ・メソード演技訓練の実際


訓練
センソリーウォーク
五感の記憶
シャワー

シャワーのエクササイズはお風呂の体全体の肌の記憶を肌で実感する訓練とは異なり、体の感じ易い部分に想像上のシャワーを当ててみる。

五感の記憶は不確かで、ついたり消えたり、感じたり感じなかったりする。

それで、OK。

行ったり来たり、出来たり出来なかったりしながら、五感の記憶のレベルアップしていく。

熱いシャワーでも、冷えたいシャワーでも自由に選んで、自分の感じ易い体の部分に意識を集中して何が起こるか見てみようという心構えでスタートさせる。

全てのエクササイズはリラックスからスタート。

椅子に座って体を緩める為に動かしながら、意識的にからだを広げ、ずらし、緩めながら何かの刺激を感じたら即声を出す。

(感情が乗り易い表現力ある声を目的とする。)

シャワーのセンセイションを感じたら、即、胸に響く声を出す。

声は、バイブレーションの入った(感情が伝わりやすい)一定の高さの声を感じている間だけ出す。

この五感の記憶の訓練は、ただ単に頭で記憶されたものを、肌で感じ取れるように訓練するのを目的とする。

お風呂のエクササイズと同じように、想像上の下着を肌で感じながら脱いで素ッ裸になったなという感覚の体験に向かう。

直接肌に空気が触れる感覚を求めて想像された下着を上げ下げしながら、素ッ裸になったセンセイションを追い求める。

この五感の記憶は出来させようとすると出来ない。

出来ても出来なくても何が起きるか見てみようという心構えが常に必要となる。

肌は、シャワーがあたる感覚を覚えている。

我々は想像の世界に生きるのが仕事。

肌が、水という想像の刺激に対して現実的な反応を起こす訓練を続ける。

もし、舞台で雨でびしょ濡れになったシーンを演じるとしたらどうする?

俳優は二つに一つ。

濡れたフリをするか、濡れたのを体験するかどうかだ。

我々のアプローチは体験の芸術といわれる。

肌の濡れを実感するするのだ。


我々の仕事は、リラックスと注意の集中が鍵だ。

からだの隅々から、緊張を追い出して目的の課題に注意を集中していく。


(訓練を文章にすると長々となるが、実際の現場では、一言、二言で生徒が納得することが多い)


「注意の集中は、釘を金槌で叩くようでなく、ねじ釘のようにユックリと回しながら深くに入っていくのだ。」
とストラスバーグに教わった。

ストラスバーグが、生涯をかけて確立していった俳優の基本訓練を、より多くの人達に手渡したいと真に願っている。

ZEN

2018年7月29日日曜日

第16回 ザ・メソード演技訓練の実際


訓練
センソリーウォーク
五感の記憶
お風呂


このエクササイズは、オーバーオール センセーションと言って、
体全体を動かしながら肌を刺激して、お湯の温かさ、濡れた感じ、抵抗感、浮力等を肌で思い出す[肌で考える]訓練です。


先ず始めに着ているもの、肌着を想像上(肌で感じながら)脱いでいく。

裸になったセンセーションを体験するための訓練なので、指先で肌着の感覚を感じながら、そして、行ったり来たりしながら、裸になって空気に触れた感覚を求め想像上の下着を脱いでいく。

どのエクササイズも同様、我々は五感の記憶を訓練するためであって、第三者から見て何をやっているのか、全く判る必要がない。

実際に脱がないで、素っ裸になった感覚の体験を求めて、いったり、戻ったりしながら、その感覚を肌で体験していく。

裸になった感覚を頭でなく、肌で感じとったら、床に座るか横になるかして、お湯の温かさ、濡れた感じ、抵抗感、浮力を求めて身体をユックリと動かし、お風呂の湯の肌の記憶を蘇らせる。


多くの人達の五感の記憶のアプローチの問題点は、頭になりやすい。

頭でなく、肌で考える習慣をつける。

又、結果を予測しない。

温かさを求めたら、お湯の抵抗感や浮力がやって来るかもしれない。

やってきた感覚に喜んでついていって、五感の記憶をより鋭敏なものにしていく。

又、出来させようとしない。

出来させようとすると出来ない。

出来ても出来なくても気持ち良く終わるように心掛ける。


一回に15分から30分やってみよう。


五感の記憶の訓練は、演技を説明の演技から体験の演技へと導いてくれる。

その重要性をいくら強調しても強調し過ぎることはないと思っている。

歴史に名を残す名優と言われた人達は、生まれつき五感の記憶に卓越していたと思っている。

ここは海ですよ!
灼熱のさばくですよ!
月夜です!
疲労困憊、死ぬかもしれない!
10年振り故郷の家に帰ってきた、目の前に母がいる。
等々、全て想像の世界の現実感は五感の記憶によってもたらされる。


僕自身、この五感の記憶の修得無くしてアクターズ スタジオの最終試験(合格者、千人に一人)の難関を勝ち抜く事が出来なかった。

次回は、アクターズスタジオの最終試験の体験談を掲載したいと思っています。

ZEN

第15回 ザ・メソード演技訓練の実際


訓練
センソリーヲーク
五感の記憶
聴覚


五感の記憶、聴覚の訓練は僕が一番苦手とするカテゴリーだ。

幼少の頃、中耳炎を患って、この数年来は補聴器に頼っている。

そのせいか、両親や兄弟、友人や生徒の声色や話し方を思い出すのが難しい。

そこで、それぞれが俳優として聴覚を養うにはどの様な方法を取れば良いか、試行錯誤した。

そして、結論に達した方法を見つけたと確信した。

その具体的なアプローチは、テレビの前にどんと座って登場する人物、それが男であれ女であれ、老人であれ子供であれ、即モノマネをして声に出す。

身振りもソックリ真似るといい。

めんどくさい事を考えずに夢中になって続けてみよう。

一年も続ければ、その道のエキスパートになる。

なんの仕事でもそうだが、その道で大成する人は、これぞと思うことに狙いを定めたら、脇目も振らず、そのことに情熱を注ぎ込む。



芸ごとを仕込むために、優れた猿を見つける方法があると云われる。

多数の猿達に、オモチャを与える。

次に別のオモチャを与える。

みんな新しいおもちゃに飛びつき、又、新しいおもちゃを与える。

みんなそれに飛びつく。

しかし、一匹だけ最初のオモチャに興味を持って、他のオモチャには見向きもしない猿がいる。


アル ・パチーノが、まだ無名の頃、アクターズ スタジオで、ステージに出て来て、テーブルの上に火のついたローソクを一本たて、ユックリと手をかざした。

それ以外に何もやらない。

又、次の週にも同じ事を繰り返す、次の週も.....

メンバー達は皆、
「アルは何をやっているんだ、止めればいいのに!」
と言っていた。

暫くして、彼は、ブロードウェイで絶賛された演技を毎晩の様に披露していった。



今回の課題の五感の記憶、聴覚をテレビの登場人物を無条件に身振り、声、表情をゲーム感覚で徹底して真似することによって、老若男女、いろいろな役を演じる時に抵抗なく入っていけると思う。

対象は何であれ、これぞといったものを見つけたら、真っしぐらに突き進んでみよう。

僕自身 、教師を目指して10年間、一 回も休まずに 恩師リー ・ストラスバーグのもと、[センソリーウォーク  五感の記憶)]の習得に励んだ。


ZEN

2018年7月28日土曜日

リラックス 番外編

現在、短期合宿クラスに参加している27歳の男性がいる。

彼はスポーツマンで、子供達にサッカーを教えている。

そのことをとても嬉しそうに話す。


スポーツの一流選手を例にとってみると、卓越したエネルギー の強さを感じさせらる。

マイクタイソンの脅威的なパンチの破壊力、
100メートル世界記録保持者ウサインボルトのダッシュ力、
サッカーのロナウドの群を抜く敏捷性等々。

これらのスポーツの名選手の共通点は、卓越したリラックスの凄さだと思う。

リラックスが良ければ集中力が高まり、集中力が高まればより深いリラックスがやって来る。

ジム ・ブラウンという当時有名なアメリカンフットボールの選手がいた。

僕がロスアンゼルスの郊外を一人で歩いていた時に一人の男が話しかけてきた。

気がついてみるとジム・ブランだった。

10分ほど、とりとめのない話をして別れたが、彼は僕に強い印象を残していった。

それは、異常な程のリラックスだ。

まるで、ライオンか何かの猛獣と歩いていたという印象を受けた。

リラックスの凄さをまざまざと体感させられた。

又、マイクタイソンあのパンチ力は、天性のリラックスした体からの脅威的な瞬発力に違いないと思っている。

又、ウサインボルトの100分の1秒を争うスタートダッシュは、異常なまでのリラックスの凄さから生まれると思っている。

サッカーのロナウドの相手の意表を突く鋭敏な体さばきは、卓越したリラックス無しには考えられない。
自分のところにボールが、来ない時は、体から全く力が抜けていて、ブラブラ散歩しているように見える時がある。


上記の3選手の特徴は何か?
共通点は何か?

それは天性のリラックスの能力だと確信している。


リラックスとは何かを知りたかったら、緊張とは何かを問えばいい。

緊張とは不必要な力だ。


この3選手に共通点は、不必要な力から一切フリーだ。


リラックスが良ければ、集中力が高まり、集中力が高まれば、より深いリラックスを呼び込む。

スポーツの世界ばかりでなく、あらゆる分野で名人と言われる人達は、集中力が良い。

リラックスが良い。


我々は、リラックスそのものを訓練によって、獲得する方法持っている。

上記の合宿生に徹底してリラックスの習得を指導したいと強く望んでいる。

そして、ここで学んだ技術をより多くの人たちに伝えて欲しいと願っている。

ZEN

第14回 ザ・メソード演技訓練の実際


訓練
センソリー ウォーク 
五感の記憶
強い味、強い匂い

五感の記憶には大変個人差があって、ある人は視覚的記憶が優れていて、自分の行った場所や風景、今まで会った人の顔を事細かに思い出すことができる。

但し、俳優は頭で思い出すだけではダメ。

頭にあるものを目の前に置く必要がある。

それが想像の世界に生きると言う事だ。

又、ワインの品評会では、そのワインを口に含み、そのワインの生産地、銘柄、年代まで当ててみせる。

一流の料理人になるには、味覚に対する卓越した能力が絶対条件だ。

但し、俳優は味、匂いの記憶を指定された時間と場所で思い出す必要がある。

  
昔の話になるが、東京の目白に、「翁」と言う蕎麦屋があった。

偶然入ったのだが、出されたソバの盛り付けの美しさに感動したことがある。

彼の身体を斜めに傾けてソバの湯で具合をみる集中力の凄さを今でも思い出す。

その後、主人は東京を離れ実際に自分でソバを育てて、日本一の蕎麦職人と呼ばれるようになった。

たまたま、知人の弟が翁に弟子入りしていて、主人が
「3年前の何月、何日に造った蕎麦の味が最高だった!」
と言っていたと言う。

それ程味覚に敏感ならば、必要な時に、いつでも自分の気分を味を思い出して自在に変えることが出来るようになるだろう。

又、僕の知人の女性は、臭覚に優れた女性がいた。

どんな匂いでもその場で即、思い出せた。

薔薇の花とか自分の好きな匂いを思い出すと笑みが溢れてくる。

人前で自分をいい気分にする必要を感じたら薔薇の香りを思い出せばいい。

練習すれば演技に役立つし、一般社会人でも大いに役立つ事になる。

実際に実物を持ってきてもアートにならない。

五感の記憶を通せば、想像の世界に入っていける。

一方、彼女は、嫌な臭いを思い出せば即、不機嫌になり表情が歪む。

使い方を修得すれば、あらゆる場面に活用できる。

これらの味、匂いは五感の記憶であり、現実でないものなので非常に想像力を刺激し易い。

実際に現場で美味しいものをだされてもアートにならない。

想像力が入らないからだ。

不思議だ!

実際に恋人同士が舞台に上がってもアートにならない。

想像で胸がときめけばアートになる。



五感の記憶が、想像の世界に入り浸りこむ鍵になる。

五感の記憶には個人差があり、自分の得意な分野を見つけて想像の世界に入り込む鍵を手に入れて欲しいと願っている。



具体的に練習するには、
先ず、リラックスを5,10分程やって、強い味(梅干し)等、
指先で想像しながら舌に近づけ、この動作を何回も繰り返してみる。
何かを感じたら、いつものようにバイブレーションを入れ、胸から平均的な声を出す。
表情と声に、より表現力を強化するために。

強い匂いも、同じ手順でやってみる。

ZEN


2018年7月23日月曜日

第13回 ザ・メソード演技訓練の実際

訓練
センソリー・ウォーク
五感の記憶
太陽


最近、マーロン/・ブランドのドキュメンタリーを立て続けに5,6回繰り返して見た。

アル・パチーノを始めとして全てのトップクラスの俳優たちが、マーロン・ブランドの才能に驚きと敬意を顕にしている。

ストラスバーグは、彼程速くメソードアクティングを習得した者はいないと言っていた。

しかし、ストラスバーグは彼を名優だと言っていない。

名優になる可能性は、有ったと。

ストラスバーグは今世紀初頭の名優、エレノーラ・ドゥーザ、グラソウ等を実際に見て体験しているからだ。

当時の時代が時代で、テレビも、映画も無く毎晩舞台に立たなければ、ギャラが貰えなかった。

現代は、スターが一本の映画に出れば一生暮らしていけるギャラがもらえる。

名優が出る筈がない。

では、なぜ、この様なリラックス、注意の集中、五感の記憶、感情の記憶を我々は訓練する必要があるのだろうか?

それは、名優達の持っていた偉大な能力に一歩でも、半歩でも近づきたいと願うからであると僕は思っている。

ストラスバーグは言っている。

「訓練の大切さは、私がそれを初めて知った1924年当時、既に明白だったが、それ以後、長年にわたって、研究と体験を重ねていくうちに、ますます、その重要性を実感している」
と。

今回の五感の記憶、太陽のアプローチは、先ず、リラックスから初めて、体の一点に注意を集中して、太陽の光の暖かさ、暑さを肌で実感する様にする。

一ヶ所が出来たら次の箇所に移り、出来たら又、次の箇所に移り、体全体に広げていく。

どのエクササイズにも共通だが、出来させようとしないこと。

出来ても、出来なくてもいいや、とにかくやってみよう
と言う心構えが大切。








太陽のセンソリーの訓練について


先ず、最初に、自分が一番感じやすいところから始める。

右頬なら右頬の一点にに注意を持っていく。

その決めたスポットをゆっくりと、上下左右ゆっくりと動かしながらそこに注意を集中して 太陽の強い日差しを肌で思い出す様にする。

感じたら感じただけ、声にして外に出す。

声は胸から、感じている間だけ、バイブレーションを入れて、平均的な声を出す。

いつも常に身体全体のリラックスに注意を促す。

カラダは広げる、ズラす、緩める。

頭で考えない。肌で考える。

だいたいこれでいいなと思ったら、次の体の箇所に注意を向ける。

強い日差しを肌で思い出す。

実感する。

この様にして、前の場所に行ったりきたりして、又、新たな場所に注意を向けて体全体に陽の光のセンセイションを体験すると酔いしれた様になる。

太陽の強い日差しを浴びた振りをするのではなくて、我々は体験の芸術、強い日射しを肌で感じ体験する。

想像のの世界に浸りこみ、酔いしれるのだ。

太陽のないところに太陽の日差しに酔いしれて立ち上がる。

それが、俳優の誕生だ!!

ZEN

2018年7月19日木曜日

第12回 ザ・メソード演技訓練の実際



訓練 
センソリー ウォーク 
五感の記憶 
カガミ


目をつぶって、2.3回右に左に身体を旋回させると、全く方向感覚を失い、身動きがとれなくなります。

という事は、人間は日々の8.90パーセントを目に頼って生活しています。


人々は、人生で出会った色々なものを記憶しています。
(両親、友人、恋人、思い出の場所、景色等)
その頭で記憶された映像を目の前に置くことを俳優は要求されます。

殆どの俳優は、見えてないのに嘘をつく。
今日はいい天気だとか、星空が綺麗だとか、
青い海、白い雲、眩しい太陽、満開の桜並木、紅葉の美しさ等々です。

誰でも、頭では思い浮かべることができますが、俳優はその頭で思い浮かべたものを目の前に置く必要があります。

それが想像の世界に一歩足を踏み入れることになるのです。

それを人の前で、カメラの前で毎回繰り返し信じることを俳優は要求されます。


想像された人物、風景、出来事をあたかも、現実の世界のように信じることによって、俳優芸術は誕生します。

acting is believing』と言われる所以です。


今回は頭で思い出された景色、人物等を目の前に置く訓練をします


つまり視覚の記憶の訓練です。


まず始めに、自分の顔を目の前に置いて見ましょう。


つまり、目の前に置かれた想像の鏡に自分の顔を映し出すのです。


想像の鏡ですから、自分の顔が、見えたり消えたりします。


女性は、メイキャップをしながら、男性は髭を剃りながら。


出来させようとすると、この五感のエクササイズは、成立しません


出来ても出来なくてもいいやと結果を求めないで「ああ、面白かった!」と終わることが、必要です。


文章で五感の記憶の訓練を説明するとマドロシクなりますが、実際にガイドすると生徒たちは納得します。

想像の世界に入り込むために、なぜ五感の訓練が必要必要なのか、自分で自分に問う事が大切です。


得意、不得意はあるでしょうが、全ての事は、あなたの中にプログラムされています。

教師は教える事は出来ません。

あなたの持っているものに気がつかせるのが仕事ですから。


ZEN